日本のピラティスの現状に寄せて

美容内科という視点からも、もちろん運動は欠かせません。

運動と言えば、ご存知の通り、ピラティスが今、日本でもようやくフィットネス、さらには医療分野でもブームのようにもてはやされています。

実は、この状況は正に20年前のアメリカでのブームの時の状況と酷似しており、私はというと大変懸念しているところです。

なぜなら、アメリカでは2005年頃のウォールストリートジャーナルのHealthのページ(写真参照)に、「あなたのピラティスの先生があなたの身体を傷める⁉」という記事が掲載され、それを受けてピラティス業界の自浄作用の下、ピラティス指導者の資格制度が整えられて、現在、理学療法士が医療としてピラティスを用いる場合でも、ピラティススタジオでピラティスインストラクターがピラティスを用いる場合でもグローバルには、最低でも450時間以上のComprehensive(総合的)なピラティスの勉強を課して、その上で試験に受かった人がピラティス指導者と認められるようになったのですが、現在の日本のピラティス指導者の状況は⁈というと、日本の今が、正に20年前当時のアメリカのような状況だからです。

当時のアメリカでは今の日本のようにピラティスがブームになり、2002年から2004年の2年間でピラティス人口が4倍にもなり、簡単に資格が取得できる軽小短の資格取得商売が蔓延ってしまい、本来、良いものである筈のピラティスで身体を傷める人が続出したのです(現在、アメリカではNationally Certified Pilates Teacherと言って、国家資格化されています)。

今の日本は、その点において正にガラパゴス状態であり、Comprehensiveなキチンとしたグローバルスタンダードなピラティス指導者としてのトレーニングを積んでいない指導者が、日本各地のスタジオやフィットネスクラブ、さらには医療機関でさえも指導している現実があり、大変危ない状況です。

また、指導者養成を開催できる立場になるまでの指導者養成のための指導者になるべくトレーニングさえもキチンと積んでいないと思われる者が指導者養成コースと称して実施して資格を授与している資格取得商売に手を染めている現実も多々見受けられます。

日本国内の某大学病院とその関連病院でさえもピラティスを取り入れたところまではまだしも、上記のようなグローバルスタンダードのComprehensiveなピラティス資格まで取得して現場で指導している理学療法士は皆無であったりする例も現実にあります。当然、大学病院とその関連病院がそのようなことでは、少なからず世にどのような影響が与えられるかは容易に想像がつきますよね。

私自身は、指導者の養成を依願された場合は、最低限の条件提示も兼ねて事前に「グローバルスタンダードのピラティス指導者資格であるComprehensive資格まではとにかく取得するように!また、Comprehensive資格を取得したその後、最低5年間は熟練した先輩のピラティス指導者の下で修行を積みなさい、それが終わって、ようやく一人前のピラティス指導者になれるのですよ。」と話して聞かせています。

皆さんもお気づきかと思いますが、パーソナルトレーニングジムも雨後の筍のように乱立しており、そこで身体を傷めたというクレームが多々あった為、一昨年くらいに消費者庁の安全対策委員会が調査に乗り出したということがニュースになりましたが、昨今では、日本のフィットネス業界の重鎮連中からも、「ピラティスも大丈夫か?」「次はピラティスがそのようになるのでは?」というような声が私の下に様々な場で寄せられているのが現実です。

貴重なお金と時間を使って健康になるためにしている運動で、逆に健康を害してしまうようなことだけは避けたいものですね。

特に医師や医療関係者として、ヘルスケア分野に影響を与える立場の皆さんには、上記の事実だけは、お伝えしなければ、と思った次第です。

もし、ピラティスについて何かありましたら、いつでもお気軽にご相談下さい。

武田 淳也

Takeda Junya

広域医療法人明和会スポーツ・栄養クリニック(福岡・代官山)理事長