更年期の美容と健康をどう守る?ホルモン補充療法(HRT)の正しい位置づけ

【広尾レディース 院長/ 日本美容内科学会 評議員 宗田 聡】

更年期の時期になると、
「急に老けた気がする」
「肌のハリがなくなった」
「体型が変わってきた」
といった相談を受けることが増えます。
これらの変化は、単なる年齢の問題だけでなく、更年期に起こる女性ホルモン(エストロゲン)の低下が大きく関係しています。
エストロゲンは、月経や妊娠に関わるホルモンであると同時に、皮膚や骨、血管、自律神経など、全身に作用する重要なホルモンです。更年期に入り分泌量が急激に減少すると、のぼせや動悸、不眠、気分の落ち込みといった更年期症状だけでなく、肌の乾燥、ハリの低下、シワ、たるみ、くすみなど、見た目の変化も目立つようになります。
また、ホルモンバランスの変化により代謝が低下し、若い頃と同じ生活をしていても体脂肪が増えやすくなります。特にお腹まわりに脂肪がつきやすくなり、「食事量は変わっていないのに太る」「以前より疲れやすい」と感じる方も少なくありません。こうした体型の変化も、更年期とエストロゲン低下の影響と考えられます。
産婦人科で行う治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があります。これは、低下したエストロゲンを補うことで、更年期障害の症状を和らげる治療法です。子宮がある方では、子宮内膜を守るために黄体ホルモンを併用します。HRTには、飲み薬、貼り薬、塗り薬など複数の方法があり、年齢や症状に応じて選択します。
ホルモン補充療法は本来、のぼせや不眠、動悸といった更年期症状を改善する目的で行いますが、その結果として、皮膚の乾燥が和らいだり、肌のハリが保たれたりすることがあります。さらに、睡眠の質や気分が改善することで、表情や姿勢、活動量が変わり、見た目の印象が良くなる方もいます。
ただし、HRTは「若返り治療」や「美容目的の治療」ではありません。シミやたるみを直接治す治療ではなく、効果には個人差があります。また、不正出血、乳房の張り、血栓症、乳がんリスクなどの副作用や注意点もあり、すべての方に適しているわけではありません。
ホルモン補充療法を検討する際には、更年期症状の程度、年齢、月経の状況、既往歴などを踏まえ、婦人科で医師の管理のもとに適応を判断することが重要です。産婦人科では、ホルモン治療だけでなく、漢方薬や生活習慣の見直しなども含めて、更年期の体と心のケアを行います。 更年期は、体調の変化と同時に、肌や体型など見た目の変化が重なり、不安を感じやすい時期です。「美容の悩みだから婦人科では相談しにくい」と思われる方もいますが、実際にはホルモンバランスの変化が関係していることも少なくありません。更年期に入って肌や体型の変化が気になり始めたら、一度産婦人科で相談してみることをおすすめします。