私たち人間は自然の一部であり、自然と同じ要素を持っています。漢方医学は、この自然観を大切にしながら、体のバランスを整えることで健康を守る知恵を発展させてきました。今回は、日本の伝統医学を取り入れた美容と漢方の関係についてご紹介します。
漢方医学の基本的な考え方に「調和(ハーモナイゼーション)」があります。体の中で不足しているものを補い、過剰なものを取り除き、滞っている流れを整える。どれか一つでも乱れると、人は不調を感じます。不調をそのままにすると病気につながることもありますが、漢方医学は病気になる前の段階、いわゆる「未病」を整えることができます。皮膚は体調を映す鏡です。不調を改善し健康を追求することは、結果的にその人にとって最も美しい肌をつくることにつながります。レーザーや注射などの外からの治療と、漢方による内からの治療を組み合わせることで、より長期的で安定した美容効果が得られると感じています。
さらに、漢方は「養生」を重視します。食事、睡眠、運動、精神の状態といった日常の習慣が心身のエネルギーを養い、美しい肌をつくります。どんなに栄養に気をつけても、胃腸の機能が低下していれば吸収は不十分ですし、血流が悪ければ栄養は皮膚まで届きません。そんなときはサプリメントだけでなく、漢方を取り入れることで腸内環境や血流を整えることができます。また、現代人は昔に比べて摂取する食材の種類が少なく、栄養が偏りやすい傾向があります。漢方薬にはマグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛など現代人が不足しがちなミネラルも多く含まれており、栄養学的な面からも役立ちます。
加えて、漢方には「抗酸化作用」をもつ成分が豊富に含まれています。ストレスや紫外線、食生活の乱れによる酸化ストレスは、しみやしわ、たるみなど老化の原因となります。漢方を用いて体の中から抗酸化力を高めることで、肌だけでなく全身の健康を守ることができます。
美容内科では、「皮膚を治す」だけでなく、「皮膚に悩む人の心と体を整える」ことを大切にしています。私たちの先祖が受け継いできた、心身のバランスを整えながら美しさを引き出す知恵――それが漢方医学です。皆さまもぜひ、内からの美容という視点を取り入れて、健やかな肌と体を目指してみませんか。